経営者の親族がいない場合や、親族内に後継者として適任な者がいない場合、経営者が所有と経営を分離することを考えている場合などには、親族外承継が選択肢の1つとなります。
中小企業・小規模事業者の経営者のうち約40%の経営者が65歳以上となっており、今後数年の間に、多くの中小企業が事業承継のタイミングを迎えることになります。
これまでの経営基盤を損なうことなく事業を継続・発展させるためには、事業承継で引き継ぐべき要素をしっかりと整理して、長期的かつ計画的に事業承継を進めていくことが重要になります。
親族外後継における後継者選定の注意点
他の従業員の理解を得る
経営者視点からは有能だったとしても、心情的人納得できない親族や従業員などもいる場合があります。実力はもちろんのこと、人望に厚く、周囲からの理解も得られる人物を選定することが望ましいでしょう。
所有と経営の分離について
経営だけを従業員等に承継しようとする場合、現経営者は事業承継後の経営に関与しないことが重要です。
相続等によって株式の所有者が変わる場合も、新たな株主が経営に悪影響を及ぼさないような対策(議決権制限株式の活用など)を講じておくことも検討が必要です。
株式の買取を行うための資金調達
MBO(経営陣による株式の取得)やEBO(従業員による株式の取得)により、経営陣や従業員が後継者となる場合、現経営者の所有する株式を買取り、経営権を取得します。
株式を買取るための資金調達が必要になりますが、政府系金融機関等を通じて事業承継のための融資制度を活用することも検討しましょう。
親族外承継(従業員等)の経営的メリット
後継者育成の時間が短くて済む
社外の人材が後継者となる場合は別ですが、従業員等が後継者となる場合は効率よく承継ができ、取引先との関係もあるため、対外的な信用も得やすくなります。
経営者が完全引退しやすい
親族承継の場合、経営者の引き際が不透明になる場合がありますが、従業員等への親族外承継であれば、経営権の譲渡を機に完全引退しやすくなります。
親族外承継(従業員等)の資産的メリット
株式譲渡による現金の取得
株式を売却することで、現金を取得できる点は経営者個人にとってはメリットをいえます。
税負担なく資産に移転が可能
従業員等の後継者が株式を買取ることによって、贈与税や相続税等の税負担を考慮することなく、資産を移転する事が可能です。
親族外承継の留意点
親族外の後継者が経営権を引継ぐ場合でも、金融機関から借入金に係る連帯保証の引継ぎを求められる場合があります。
経営者に引き続き経営者保証をしてもらうことや、保証の内容を確認し、金融機関に対して保証軽減や解除の申出を検討する必要があります。
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